君に成功を贈る数少ない(外国、というかアメリカに比べて)日本の成功哲学者(なのかな?)の中村天風という人の多分どこかで話した講義内容、というか講和録のようなものを文章に起こした本(だと思う。説明が書いてないからわからないけれども)。
この手の本に多い、難しい言い回しでなんとなくわかったような気にさせられる、というようなことは全くなくて、話し言葉で、しかもわかりやすい言葉で書いてあるから非常に読みやすいです。それに、語りかけているように書いてあるので、こうしなさい、ああしなさい、と上から目線で言われているような感じも受けず、これこれこう思うだろう、ならあれをやろうぜ、みたいな感じになっていて話を受け入れやすい。
そして、文字のサイズが大きいから結構厚い本なのだけれど、サクサク読み進めていけます。ページ数をかせいで高く売る手法なのかどうなのかはわかりませんが、このお陰でなんかあっという間にこんなに読み進められた、という妙な達成感を持って読み進める事ができました。たった1時間で半分以上読み進めてる! みたいな。
本の内容としては、この人は昭和43年に死んでしまった方なのだけれど、古い感じなどまったくせず、むしろ現在の私たちに向かって言ってるような、そんな錯覚すら感じさせるほど、今の世でもその通りだと思うことが書いてあります。
今のマスコミ時代に生きる特に若い人々は、みんなエゴイスティックな気持ちのほうが盛んに心に燃えています。大義名分を本意として生きる気持ちなんて、今の日本人から消えてなくなったと思われるような時代ですからね…。
この辺なんか特に今でも通じそう。なんか当時こういう風に言われていた若者が、今では私たち若者に対して言っていると思うとなんとなく面白い。歴史は繰り返すというか、若者はいつの時代も変わらないものなのかな、とかそういう気がしてきます。
この本は人生で成功をするには、というより幸せな人生を過ごすには、どういう心構えでいればいいか、ということを教えてくれる本なのですが、この中村天風と言う人の体験が多く語られていて、歴史的な読み物としても興味深いです。
この人は軍事探偵、ようするにスパイ活動なんかをやっていた人なのですが、その体験談がまぁすごい。
訓練中、いちばんつらかったのはね、鰹節一本を教官がもってきて「おい、今日から五日間、これ一本で後者の天井に忍べ。天井裏へ入って、しょんべんも大便も音のしないようにそこで処理しろ」って言うの。鰹節一本で五日間ですよ。
(中略)
笑いながら聞いているけど諸君ねえ、糞しょんべんを、たれるべき所でない所へたれて、知れないように処理しろってことぐらい、難しいものはないんだぜ。
とにかく大便のほうはうまく処理ができますよ、臭いの自分が辛抱すりゃ。でもね、しょんべんのほうは流れるってやつですからねありゃ。あれを天井裏でもって、とにかく下へこぼれないように処理するというのにはです、相当微妙な流転運動を行わなきゃできないんであります。(笑)
これを読むだけで軍事探偵のいわゆるスパイ活動ってのがどんだけ過酷だったのかわかろうものです。にしても私の感覚ではしょんべんよりは大便の方が処理に困りそうなもんですが、しょんべんの方が大変ってのが少し驚きました。ただ、よくよく考えてみれば確かに屋根裏に潜んでいることを考えれば下手すりゃ下の部屋にしょんべんはたれてしまうからしょんべんの方が大変かもしれないな、という気もします。
私がこの本の中で一番ためになったのが次のところ。
いいかい、重要なことを聴くときは、恋人の言うことを聴くような気持ちでもって、聴くようにしてごらん。
どうだい恋人持ってる人。いや、恋人いなくたって、自分が「好いたらしいなあ」と思ってる人が言ってるの聴くとき、一生懸命な気持ちでその人の言うことを聴くだろう?。
ついでに言うとね。重要なことは、けっして手帳やノートなんぞに書きなさんな。人間はね、覚えなきゃいけないことは、覚えられるようにできているんだから。
恋人の言うことを聴くような気持ちでもって人の話を聴いたならば、そりゃ覚えないようにしようったって、忘れやしませんよ。
これなんて確かにそうだな、という気がしますよね。自分の好きな人の言った言葉なんて、いちいちメモっておく人なんて滅多にいないと思いますが、好きな人の言った言葉を覚えている、というより忘れられない人は多いんじゃないかと思います。それが良い言葉であれ、悪い言葉であれ。そういう気持ちで大切な話を聴けば、確かに相手の言っていることを心の深くに刻み込めるかもしれない、という気がします。
とはいえそれが簡単にいけば苦労しない、というようにも思います。自分の好きな人とかけ離れた風体、性格の人、例えば私で言えば油っぽい感じのおじさんとかが何か重要な話をしたとしても、それを好きな人が言っているように聴くのはちょっと無理があるような気がします。
ただ指針としてはとても適切なものであるという気がするんですよね。重要なのはそうすることではなくて、そうしようとすることという気がする。相手の言うことを好きな人が話してるのを聴くように聴くのは無理でも、好きな人が話しているのを聴くように聴こうとすることはできます。そういう態度をとることで相手に対しても一生懸命聴こうとしているという気持ちが伝わり、円満な人間関係を築けるようになるんじゃないか、そんな気がします。本当は実践できるのが一番いいんでしょうけど。
この本は他にも色々とためになることを教えてくれます。辛いときに辛いって言ってもどーにもならんだろ、とか、種を蒔かなきゃ花は咲かないとか、そういったことを時に実例を交えて、自分の体験を交えて、語るように書かれています。
普通のスピードで読み進めても多分3〜4時間あれば読み終える事ができると思います。また、1つ1つの話は3〜4ページなので、自分が興味を持ったところだけ拾い読みをすることもできます。読めば必ず何かしら得るところがあると思うので、興味がある方は一読してみることをおすすめします。
