家から駅に向かう間に通る道は車道と歩道が明確に分けられていて、車道と歩道の間にはガードレールというかなんていうんだろ?柵みたいなものが付いています。大通りにもある、車道と歩道の間に立ってるあれです。
 そんな風になっている割に車の通りはそれほど多くもなく、車道を突っ切る人がたくさんいます。つまり道路に対して横断歩道もない所を垂直に渡る人がいるということです。

 私が歩いていると、今述べたように道路を横断してくる少年、多分中学生ぐらい、の2人組がいました。
 2人は車道を渡りきると、1人はちょっと迂回してフェンスの切れ間まで歩き、歩道に入ってきましたが、もう1人は片手をフェンスに置いて、そこを支点としてピョンと飛び跳ねて歩道にやってきました。
 そして、迂回した少年が飛び跳ねた少年に追いつくと、飛び跳ねた少年は

「俺にほれるなよ」

と髪をかき上げながら言いました。
 言われた少年は「そのくらいでほれる奴なんていねーよ」みたいな事を言っていました。

 で、少年2人は私とすれ違う形で歩いてきたのでそういった光景を全て目の前で見ていた私は通り過ぎる瞬間笑ってしまいそうな自分を抑えるのに結構努力しました。

 と同時になんか色々な事を考えました。


 1つは「まだ彼ら(多分14歳ぐらい)が触れるものの中にそう言った台詞回しが使われているものがあるんだなぁ」ということ。もしかしたらこの少年(言ったほう)が古い漫画だとかドラマだとかが好きな人なのかもしれませんが、こういう言い回しを最近している漫画は見たことがない。きっとこの少年は「俺にさわるとやけどするぜ」とかそういう台詞をしょっちゅう使っているに違いない。


 それと、こっちが言いたかったことなのですが、「こういう話をしなくなったな」ということ。そしてこの少年をなんだかやたらとうらやましく思いました。

 いや、私も軽口ってのは結構たたいたりします。同僚に何か頼まれた時に「うーん、それは高いよ」とか言ったりすることはある。
 でもなんて言うんだろ、こういうたわいない会話というか、子供くさいというか、そういう会話って全然しなくなってしまったなぁという感じです。

 今でも高校の時の友達とか、大学の友達と遊ぶし飲みに行くこともあってそういう時は当時の話がよく出てきたりして「あの頃は馬鹿だったよなー」とか当時のノリ的な話はするけれど、上で挙げた中学生の「俺にほれるなよ」みたいな発言ってない。
 良く言えば「大人になった」ということなんだろうけど、逆に言えば「世界が狭くなった」ということになる。
 そう考えるとそういう自分が少し嫌なのと、全くためらいなくそういった台詞を口に出していた中学生の少年が非常にうらやましいなぁと思う。